- はじめに
- 防災用に適したヘルメットとは
- ヘルメットの材質による特徴
- ヘルメットの素材別耐用年数の目安
- 比較検討した「防災用」ヘルメットの一覧
- ミドリ安全 TSC-10 Flatmet
- ミドリ安全 SC-SLM RA2シリーズ 飛来・落下物用(KP付きは転倒・転落にも対応)
- ミドリ安全 SC-15PCLNS RA2シリーズ 飛来・落下物対応 転倒・転落対応
- 株式会社イエロー タタメットシリーズ タタメットBCP
- 加賀産業株式会社 Osamet(オサメット)
- 進和化学工業 SS-21型ヘルメット
- 住友ベークライトプラスチック SAIII-B
- 谷沢製作所 Crubo(クルボ)
- DICヘルメット AA-17 軽神(KEIJIN)
- DICヘルメット IZANO
- 株式会社トーヨーセフティー BLOOM, BLOOM II
- 株式会社トーヨーセフティー MOVO(BLOOM III)
- DICヘルメット社 IZANO 購入!
- まとめ
はじめに
田舎に住んでいるころから、防災用品はある程度確保していました。
しかし、帰宅困難時等を想定した職場での被災をあまり考えていなかったので、職場用の簡易版の持ち出し袋をボチボチ作っています。
その持ち出し袋用に防災用折り畳みヘルメットである
DICヘルメット社製の IZANO
を購入しました。
蛇腹状にコンパクトに収納できるうえに、
- 飛来・落下物用
- 転倒・転落保護用
の両者の検定に合格している製品です。
今回学んだこと
- ヘルメットの寿命(賞味期限)は結構短い。(材質による)
- 材質(素材)により、ヘルメットの特性は変わる。(耐久性や絶縁性など)
- 「防災用ヘルメット」という法令で定められた規格は存在しない。が、作業用ヘルメット(保護帽という。)には、対「飛来・落下物」規格や、対「転倒・転落」規格があり国家検定が存在する。
- 当たり前だが、国家検定合格ヘルメットを装着していても、重量物の落下の直撃を受けたり、高所(例えば数十メートル)から墜落すれば、当然受傷(どころか死亡)する。・・・過信はできない。
防災用に適したヘルメットとは
ヘルメットには様々な用途・種類がありますが、「防災用ヘルメット」として特別の規格や、国家検定などが設定されているわけではありません。
しかし、「作業用ヘルメット」というカテゴリーには、国家検定が存在しますので、「国家検定をパスしている。」ということが防災ヘルメットを選ぶうえでも一つの目安と考えられます。
日本においては、特定の作業(仕事)につく場合には、必ずヘルメット(保護帽)を装着することが義務付けられています。(労働安全衛生規則、労働安全衛生法等)
また、着用を義務付けられているからにはそのためのヘルメットには国家検定が存在し、それをクリアしたものでなければならないことになります。
保護帽の規格としては、3種類が存在し、それぞれに検定方法が定められています。
- 飛来・落下物用
- 転倒・転落時保護用(墜落時保護用)
- 電気用保護帽
このうちの一つだけの規格(性能)を備えたものもあれば、複数(すべて)を兼ね備えたヘルメットも存在するということになります。
さて、防災という観点で考えた場合、上記のどの規格(性能)が重視されるべきか?
想定される状況を想像(妄想)してみました。
- 対飛来・落下物性能(規格);避難する際にヘルメットを装着し、余震の際などの脆弱な建物からの落下物(壁面・ガラス・看板など)が発生した場合にそれに備えることができそう。・・・震災・弾道ミサイルによる攻撃等の本震や第一波攻撃の際にこれをとっさにかぶれるのかは疑問(J-Alertが鳴っていれば、その段階で使用できますが。)
- 転倒・転落時保護性能(規格);不安定なビルの高層階から階段で避難する際や、がれきだらけで足もとが不安定な際の避難時にヘルメットを装着していれば、転倒・転落時に頭部を守ることができそう。
- 絶縁性能(規格);これは想像しにくいですが、地震などで電柱が倒れて電線が垂れ下がっているような状況において、感電による障害を予防できるかもしれません。
「防災用」ヘルメットとして、これらの性能がすべてそろっていればベストかと考えますが、優先順位をつけるなら、
「飛来物・落下物」>「転倒・転落」>「絶縁」
でしょうか。
また、日常的に使用する「作業用」や「乗車用」ヘルメットとは異なり、「防災用ヘルメット」の特徴としては、
- 普段は使わない。よって、かさばらない収納性もよい物が望まれる。
という点も考慮されると思います。
ヘルメットの材質による特徴
ヘルメットといえば、なんとなく「プラスチック」といった漠然としたイメージしかありませんでしたが、素材によって得意・不得意があり特徴があります。
一般的にヘルメットに使用される材料には以下の4素材です。
- FRP;繊維強化プラスチックの略。使用する繊維はグラスファイバーが一般的。(カーボンファイバーも航空機などの素材としては使用されるが高価)。小型船舶の船体やユニットバスの浴槽、各種スポーツ用品・釣り用品等にも多用される。 軽量で強度がある。ヘルメットの素材とかなり理想的だが、「絶縁性」の面で他の3素材より劣る。
- ABS樹脂;アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、ポリスチレン(S)から作られるプラスチックの一種。比較的頑丈で酸・アルカリにも強い。 電化製品の筐体などにも幅広く使われており、光沢のある美しい素材という面もある。
- PC樹脂;ポリカーボネートの略。CDやDVD、カーポートの屋根、自動車のヘッドライトのカバーなどに用いられており、衝撃に強く、光沢のある素材。弱点は薬品類(アルカリや有機溶媒)。各社ラインナップにおいては「高級素材」の位置づけであることが多い。
- PE樹脂;ポリエチレンの略。 各種日常品のパッケージやフィルムなどに大量に使用される素材。 取り立てた特徴はないがとにかく安価でありリサイクルもしやすい。弱点は熱に弱く、容易に「燃える」点。
それぞれ、メリット・デメリットがありそうですが、すぐ燃えるPEは何となく避けたい気もします。
ヘルメットの素材別耐用年数の目安
日本ヘルメット工業会での「産業用」ヘルメットにおける推奨を引用します。 意外と短いと感じました。
また、変形したり一度強い衝撃をうけたヘルメットは交換の必要があります。使用条件が、高温多湿であったり、直射日光にさらされたり、薬品の暴露を受ける場合は劣化が早まります。
- PC、ABS、PE等の熱可塑性樹脂製保護帽は、外観に異常が認められなくても使用開始より3年以内
- FRP等の熱硬化性樹脂製保護帽は、外観に異常が認められなくても使用開始より5年以内
「防災用」として使用する際には「6年間」という記載もあります。以下参照までに。
一般社団法人 日本ヘルメット工業会 HPより
比較検討した「防災用」ヘルメットの一覧
さて、以上を踏まえたうえで、自分が候補として検討した製品を挙げておきます。
ミドリ安全 TSC-10 Flatmet
内部の衝撃吸収素材がないため「転倒・転落」の検定はパスしていませんが、独自の折り畳み方式も相まって、折りたたんだ際のサイズ(厚さ;3.3cm)は圧倒的です。
素材はPP、PC、ABS樹脂がパーツ別に仕様されています。 重量は430g。
ミドリ安全 SC-SLM RA2シリーズ 飛来・落下物用(KP付きは転倒・転落にも対応)
このシリーズは折り畳みができませんが、超軽量が売りですので、防災用に保管したり非常持ち出し袋に入れる場合などに有用と思われます。
FRP製ですが、これに「炭素繊維」シートを付加して、軽量性と強度を両立しているモデルで、転倒・転落非対応のモデルの場合は290gと軽量です。
炭素繊維シート使用というところが、オーバースペックな感じもしますが、逆に惹かれてしまうなあ・・・。
ミドリ安全 SC-15PCLNS RA2シリーズ 飛来・落下物対応 転倒・転落対応
防災用としては過剰な装備かもしれませんが、最高を求める方にはうってつけかもしれません。 フラッグシップモデルと考えてよいのではないでしょうか。
美しいポリカーボネート製で、本体に収納可能なクリアなフルフェースのシールドも装備されています。 すべてにKP(衝撃吸収材)が装備されており「転倒・転落」にも対応しています。
ただし、重量は620gと上記超軽量タイプの倍以上してしまいます。収納性・運搬性は犠牲になります。
株式会社イエロー タタメットシリーズ タタメットBCP
株式会社イエローは、本邦のプロダクトデザイナーの社長が率いる工場を持つメーカーです。
なんといっても、防災用のタタメットシリーズが有名だと思います。
自分が知っていたのもタタメットシリーズでしたが、現在、シンプルなタタメットは販売終了となっており、頭巾機能一体型の「タタメットズキン」シリーズと、その改良・進化版の「タタメットBCP」がラインナップにあります。
BCPはBusiness continuity planの略で、企業向けに低コストで大量導入も考慮されているようです。
収納時の厚さは35㎜、重量も375gと軽量。 一見軽薄そうに見える本体ですが、「飛来・落下物検定」をクリアした製品です。また、あごヒモにはホイッスルが付属し、救援を呼ぶ際に有用です。
加賀産業株式会社 Osamet(オサメット)
加賀産業は名古屋に本社のある会社で、航空宇宙産業関連製品も扱うような会社。
Osametはいわゆる「折り畳み型の防災ヘルメット」のカテゴリーになります。
折り畳み時の厚さは45㎜。重量は375g。A4ファイルサイズのケースが付属しているので、デスクや本棚にすっきりと収納可能。
折り畳み式といっても、これは「蛇腹型」のタイプになります。
しっかりと「飛来・落下物検定」をクリアしています。(転倒・転落検定は非対応)
進和化学工業 SS-21型ヘルメット
昭和44年創業の本邦ヘルメットメーカー。
SS-21型は、ABS樹脂製で、折り畳み式でもない普通のヘルメットですが、その姿が気になったので紹介しておきます。
見た目は、ステルス戦闘機のF117?だったかの「ポリゴン様」のカクカクの外観。ヘルメットといえば「丸い」ことが、強度の上からも常識的だと思っていたので新鮮な造形。
飛来・落下物検定はクリアしています。転倒・転落検定は衝撃保護材付属のタイプならば加えてクリアしています。
参照;進和化学工業公式サイト
住友ベークライトプラスチック SAIII-B
住友ベークライトプラスチック社は、「樹脂製まな板」と「ヘルメット」が主力の会社。
「防災用」とか「折り畳み」といったくくりでのヘルメットは売っていませんが、安価で防災用としてもお手頃なベーシックな製品がSA III-Bです。
安いABS樹脂製ですが、インナーが装着されており「飛来・落下物」検定だけでなく「転倒・転落」検定もパスしています。
家族分まとめて揃えたいといったときに、信頼できる会社の製品でかつお手頃にというニーズに合致するのではと感じます。
谷沢製作所 Crubo(クルボ)
産業分野でのヘルメットをはじめとする安全衛生用品を幅広く製造している会社です。1932年創業の歴史ある会社です。
Cruboは折り畳み式のヘルメットのカテゴリーになります。
折り畳み方式は特徴的でネーミングの由来にもなっています。
素材はABS樹脂製。 重量は420gで、収納時の厚みは80mmと折り畳みタイプとしてはやや厚いものの、それでも組み立て完成時の約半分の薄さです。A4サイズのパッケージになっていて、職場などに収納・常備しやすいようになっています。
参照;谷沢製作所公式サイト
DICヘルメット AA-17 軽神(KEIJIN)
今回自分が購入したIZANOもDICヘルメット社製ですが、折り畳みではないタイプで最軽量のこの「軽神(KEIJIN)」も防災用としてはよい選択だと思います。
ABS樹脂製ですが、本体と衝撃吸収材を一体で形成することで軽量化を実現しています。これは逆に言うと衝撃吸収材を交換できないことになりますが、防災用という用途を考えれば特に問題はなさそう。
重量は270g!。
それでいて、「飛来・落下物検定」と「転倒・転落検定」の両国家検定をパスしています。
DICヘルメット IZANO
同じくDICヘルメット社の「折り畳み」タイプのヘルメットです。 今回自分はこれを選びました。
素材としては一般的なABS樹脂製。重量も一般的な450g。
折り畳み時の厚さは62mmとかなり薄く、収納時にかさばりにくい造りです。
折り畳みタイプながら、「飛来・落下物検定」も「転倒・転落検定」も、両者ともパス。見た目も、いかにも折り畳みっぽくなく普通のヘルメットに近いシルエットです。
株式会社トーヨーセフティー BLOOM, BLOOM II
東洋物産工業株式会社が製造するBLOOMとその発展型のBLOOM IIは、防災用を念頭に開発された、折り畳み式のヘルメット。
東洋物産工業は創業昭和35年のヘルメットなどの作業用の安全衛生製品を製造する歴史ある会社。
BLOOMシリーズは、「転倒・転落」検定は非対応ながら、「飛来・落下物検定」にはもちろん合格しています。
BLOOMの厚みは収納時で80mm。さらに、BLOOMIIは折り畳み時の厚みは45㎜とトップクラスの薄さです。 素材はABS樹脂、PP樹脂、PE樹脂の組み合わせでできています。
BLOOM IIは折り畳み式としも結構軽い370g。
スペース、重量ともにやはり新型のBLOOM IIが優れるかなと思います。
株式会社トーヨーセフティー MOVO(BLOOM III)
上記BLOOMシリーズの一員でもありながら、別ネーミングのMOVOと命名されています。折り畳みヘルメットタイプのカテゴリーになります。
BLOOM, BLOOM IIではサポートされていなかった「転倒・転落」検定をパスしているところがポイントです。
収納時の厚みは74mm。重量は衝撃吸収ライナーを含めても415gです。ABS樹脂製。 見た目はほとんど折り畳み式には見えない普通のヘルメットのような外見です。
DICヘルメット社 IZANO 購入!
↑;オレンジ色の収納袋が付属しています。
↑;収納袋から本体を取り出します。つば付きの本体は長さ303㎜ 幅は220㎜。前述の通り厚みは、最厚部で82㎜。簡単な取り扱い説明書が付属しています。
↑;折り畳み時と使用時。それぞれ側面です。使用時のフォルムも比較的折り畳みっぽくない普通のヘルメットに近い印象。表面は艶消しの処理。
↑;IZANOの収納時の裏面。発砲スチロール製の衝撃吸収ライナーも見えます。おわん型の部品が「マトリョーシカ」的に格納されています。左(前側)にヒンジ部がありそこを中心に扇のように各部品が動く仕組み。
↑;折り畳み状態から、使用状態への組み立てはいたって簡単。裏から手で押し出せば、「カチカチ」と組みあがります。
↑;逆に組みあがった状態から元の収納時状態に戻すには、三か所ある黒い「ノブ」を引き上げることで可能。 これは若干コツが要りますが、むしろ簡単にたたまれてしまわないようになっているのは当然かもしれません。
↑;実際にかぶってみました。後頭部にくるパッドがあるため思いのほか安定します。かぶり心地?は普通のヘルメットと変わらない印象です。
まとめ
職場用の防災非常持ち出し袋に入れるべく、コンパクトな折り畳み式のヘルメット
DICヘルメット IAZNO
を手に入れました。 現在、早速職場のロッカーに格納しています。
防災用の頭部保護用品としては、ヘルメット以外にも、
- 防災ずきん
- 保護キャップ
等も見かけますが、一定の頭部保護能力を担保するならば国家検定
- 飛来物・落下用
- 転倒・転落用
をクリアした物が良いのではと考えて、ヘルメットにしました。
職場用でスペースの都合で「折り畳み式」にしましたが、比較的収納・備蓄スペースに余裕がある方ならば、「非折り畳み式で軽量タイプ」もいいかもしれません。 また、他の防災用品同様に定期的な検査も重要です。劣化・破損がないかはチェックしていきたいと思います。