はじめに
北海道をレンタカーで巡る旅をしました。訪れた場所や旅館で感銘を受けた所を中心に記載していますが、今回は余市市にある「ニッカウヰスキー余市蒸留所」に行って来た際の様子を書きました。
北海道らしい冷涼な環境の中、緑豊かな広い敷地に年代・歴史を感じさせる石造り風の蒸留所の施設が立ち並んでおり、その美しさに感動します。
また、実際にウイスキーを作る工程通りに各施設を自由に見学可能です。
昔ながらの職人技の工程と、レトロ感溢れる施設・設備・道具等も見学出来て、近代日本(あるいは近代スコットランドか)にタイムスリップしたかのようなノスタルジックな感動がありました。
お酒のことがよくわからない中高生の子供達も一緒でしたが、彼らなりに楽しめていたようです。
ニッカウヰスキー余市蒸留所とは
ニッカウヰスキー余市蒸留所は、NHKの朝ドラにもなった竹鶴政孝(マッサン)が開設したウィスキーの蒸留所です。
北海道の余市市にあります。ですが、自分にとっては「余市ってどこ?」状態でした。
札幌から石狩湾に向けて北東へ進み、小樽を超えて海沿いに行くと「余市市」があります。
といっても、全然ぴんと来ないと思うので地図をどうぞ。
車で(高速道路を利用すると)、小樽からは約30分、札幌市街からは約1時間で到着します。
施設の駐車場もまあまあありますが、繁忙期にはすぐに満車になってしまう規模のようです。実際我々もGWでの見学だったこともあり、余市蒸留所の駐車場は満車で駐車できなかったので近隣の駐車場を利用しました。(道の駅;余市宇宙記念館も併設;無料でした。ちなみに毛利宇宙飛行士が与市出身とか。)
少人数(10名以下)の家族で自家用車や公共交通機関で訪問するのであれば、予約は不要です。(ただし、ガイド付きの見学をしたい場合は別でネットで予約が必要。)
入場料・入館料はなんと無料(タダ!)。
ガイドがなくとも、パンフレットと各施設の映像(動画)での施設解説が充実しているので、我々家族の場合はフリー見学でも十分楽しめました。
営業時間は基本は、9:00-17:00ですが、レストラン・竹鶴邸等施設によって若干前後しています。
年末年始の二週間だけが休業日で他は年中無休とのこと。
ただし、季節や日時、天候によっては稼働していない施設もあるようなので、事前に公式HPで確認していった方が安心です。
各施設やレストラン等は屋内ですが、広い敷地に点在する施設をめぐる感じで見学するので悪天候時にはコートや雨具・傘等も必要です。
食品製造業ですので、飲食物やペットの持ち込みは禁止となっています。(一部介助犬等は除外)
ニッカウヰスキー余市蒸留所の実際の様子;写真中心に
ナビ通りにまずは、「余市蒸留所の駐車場」へ向かいましたが、「満車」の案内。一応想定していたので、第二目的地の道の駅(余市宇宙記念館)へ向かいました。
↑;余市宇宙記念館。 道の駅が併設されており約40台の無料駐車場があります。我々の後からも続々と駐車する車がやってきたので、結構すぐに満車になってしまうかもしれません。 余市宇宙記念館も、時間があれば結構面白そうだったのですが、この日はパス。
↑;国道229号線を歩いて5分位で正門に到着します。(蒸留所の駐車場はちょうど敷地の反対側になります。) 実は、正門の近くにも「余市市町営黒川駐車場」があって、正門までは徒歩1分な感じでした。(その代わり、有料ですが。) 悪天候時や冬季等はこっちの方が良いかもしれません。
↑;敷地の東に位置する正門の内側からの写真です。 西洋の要塞・城のような雰囲気。チェスの駒(ルーク)にも似ているかも。特にゲートがあるわけでもなく無料で入っていけます。
↑;登録有形文化財 を示す表記。
↑;正門を入るとすぐ目の前には、赤い屋根の「乾燥棟(キルン塔)」が見えます。 石造りの建物に格子窓といった風情で、日本というよりはやはり西洋を感じる雰囲気です。ガイド付きの見学をする方(要予約)は、左手の待合室でツアー開始を待っていました。
↑;無料でもらえるパンフレットの表紙。 蒸留所内の案内図が含まれているので、それに沿って順番に見学していきます。
↑;パンフレット内のMAPには、各施設に番号がふってあり基本的にその順番で見学していくとウィスキーの醸造・蒸留過程の順を追うことができるようになっています。
↑;材料の麦に水を加えて発芽させたものを「モルト」と呼ぶそうですが、それを炭(ピート)で焚いて乾燥させる工程がこの「乾燥棟」で行われるそうです。
↑;乾燥棟内部。 実際の乾燥の様子は見えませんが、大麦麦芽のサンプルがありました。また、次の工程で粉々にされた「粉砕麦芽」も右手にあります。
↑;その隣にはピート(泥炭、草炭)のサンプルも置かれていました。 冷たく湿った環境(北海道やスコットランドなど)で、植物が数千年かけて体積してできた物らしいです。(いわゆる石炭になる一歩手前状態なので、燃料として燃やすことができるとのこと。) これを燃やして麦芽を乾燥させることで、ウィスキー特有の「スモーキーフレーバー」を作り出すとか。 余市のピートも北海道の石狩平野で採取されています。
↑;次の工程の「粉砕」を行う粉砕棟。ここは見学できませんでした。立ち入り禁止。 同様に次の「糖化」の工程も現在は見学を実施していないそうです。
↑;次に行きます。 粉砕された麦芽には水をくわえられて麦芽に含まれるアミラーゼでデンプンが一部糖になるそうです。その過程が「糖化」で、糖化された液体に酵母を加えていよいよアルコール分を作る過程が「発酵」。それが行われる「発酵棟」です。
↑;発酵棟内部には発酵を行う縦長の金属製タンクがあります。ずらっと並んでいます。
↑;糖化された麦汁は「メロン」並みの甘さとのこと。
↑;発酵棟には、このような動画による解説も行われています。 数分ですが分かりやすく解説されています。
↑;発酵の次の工程は「蒸留棟」で行われる「蒸留」。
↑;「蒸留棟」の内部。「ポットスティル」と言う名の蒸留塔がずらりと並びます。よく見るとポットスチル上部には、神社で見かけるような「しめ縄」のようなものがみえます。注連縄というそうです。竹鶴政孝の実家が造り酒屋だったので、その習慣を引き継いでいるそうです。和洋折衷ですが、結構似合っていると感じます。
↑;さて、蒸留塔(ポットスチル)の熱源はなんと「石炭」。 しかも隣にスコップがありますが、人力で石炭を投入しています。「石炭直火蒸溜」というらしく、世界でも余市蒸留所でしか採用していないそうです。 火加減は職人の経験と技が必要とのこと。なんだか、蒸気機関車の石炭投入を連想させます。
↑;発酵棟同様に「蒸留棟」にも説明用の動画を流すディスプレイが設置されています。 長くないので鑑賞をお勧めします。
↑;蒸留の仕組みを書いた案内板。蒸留を二回繰り返すことでアルコール分は63%程度まで上昇するそうです。蒸留直後はウィスキーも無色透明なのだとか。
↑;見学順としては蒸留棟の次となる「混和室」。ここでは実際の作業は行われておらず、樽の整合過程、樽製造の工具の展示等のスペースとなっていました。 現在、実際に樽を作っている「製樽棟」の見学はできません。
↑;混和室内部の様子。 展示スペースですね。奥は樽を作る工具等があります。右奥には、樽をバックに記念撮影できるスポット。右側には製造工程の実物のウィスキー樽が並んでいます。
↑;樽に原酒を詰めて、メインテナンスをしつつ、最後に樽を開けるまでの流れの説明もありました。
↑;樽の製造行程の一部。焼く前はこんな色ですが、
↑;バーナーで樽の内側を焼くとこんな感じに焦げます。
↑;とりあえず適当に焼けばいいというものではないようで、上記のように焼き加減で「味わい」が変化するとか。しっかり焼くほどフルーティーサワーで、樽の香りが強くなるみたいです。奥が深い。
↑;これまたレトロな感じの小さな建物は昭和9年建造の旧事務所の建物。 ウィスキーを製造しても熟成のための期間が必要なため、当初は製造する一方で出荷できなかったそうです。その間は、リンゴ等で果汁やジャムを作ってしのいでいたとか。
「ニッカウヰスキー」の社名の由来ですが、
上述の如く、ジュースやジャムを作っていたため当時は「大日本果汁株式会社」と呼んでいたそうです。
で、「大日本果汁;だいにっぽんかじゅう」から「大」と「本」と「汁」を取り除いて、「日」と「果」を残して「日果;ニッカ」という社名になると・・・そういうことですか。
↑;創業者まっさんの奥さん(リタ)の名前が付いたRITA HOUSE。洋風のいい雰囲気。 以前は研究所として活用されていたそうですが、現在は耐震性の問題があるため閉鎖され一般公開はされていないそうです。
↑;余市市内にあった旧竹鶴邸。 平成14年に工場内敷地に移設されました。 一部ですが内部の見学も可能。 戦前の建物とは思えない「モダンな」建物。
↑;少し一休みして、ニッカウヰスキー余市蒸留所の敷地内の様子です。この日は曇り空でしたが、それがむしろスコットランドの冷涼で湿潤な気候っぽくて、赤い屋根の洋風の工場の建物とマッチしているかなと感じました。
↑;実際の工程の見学としては最後の貯蔵庫。「一号貯蔵庫」
↑;公開されている「一号貯蔵庫」は実際の原酒が本当に樽に詰められて並んでいるとのこと。このようなアルコールに関する注意書きがあります。(公式サイトには「空樽」とも書いてありますが??)
↑;現在のニッカウヰスキー余市蒸留所は余市川のほとりにありますが、この一号貯蔵庫は昔は余市川の「中州」にあったとか。 床は土がむき出しであり適度な湿度に保たれるようです。それでも20年の熟成期間で半分程度は蒸発してしまうそうです。
↑;ウィスキー博物館は平成10年に完成。 貯蔵庫二棟をそれぞれ「ウィスキー館」と「ニッカ館」と名付けて博物館として各種展示をしています。2館は連絡通路でつながっています。
↑;ウィスキー博物館にある有料の試飲カウンター(ニッカ会館では、無料試飲もやってました。)。 このほかにも博物館なので、ウィスキーや蒸留酒の歴史、原材料・製造工程の説明等の資料・展示がたくさんありました。
↑;ニッカ館の方には、ニッカウィスキーの歴史や竹鶴夫妻の生活の様子、各種受賞製品の展示等もされていました。 よく整備された分かりやすい展示だと思います。
↑;ウィスキー博物館を出ると残りは売店である「ディスティラリーショップ・ノースランド」と無料試飲ができる「ニッカ会館」、「レストラン」のあるエリアに到着して終了。 ニッカ会館側に駐車場があるので、こちらに駐車できたお客さんは、順路を逆に見学する感じになります。
売店には、各種ウィスキーが販売されており、みなさんこぞって購入されていました。が、我々家族はあまりお酒に強くないためにスルー。 しかし、余市蒸留所の歴史や手間暇かかった製造過程等を知ってしまうと、ついウィスキーを買ってしまいたくなる気持ちはよくわかります。しっかり洗脳された感じ。
来た道を戻って帰路につきました。自分たちはザーッとみて約1時間半程度。じっくり見たり、食事したり、お土産を買ったりするならば2時間以上あった方が良いかもしれません。
↑;創業者 竹鶴政孝の像を見て帰りました。
まとめ
北海道余市市の「ニッカウヰスキー余市蒸留所」を見学してきました。
無料ですし、実際の製造現場をリアルに体験出来て楽しかったです。
近代日本やスコットランドの歴史だったり、生物や化学などの理科系の学問に通じる展示があったりで、中高生の子供たちも結構真剣に見学してくれていて、親としては連れてきてよかったとほっとしました。
なんといっても北海道の大地に馴染む西洋風の建物が並ぶ風景が、雄大かつノスタルジックです。アルコール好きな方はもちろんのこと、そうでない方や未成年でも十分楽しめる施設だと思います。
自分はGWに訪問しましたが、冬景色もまたいい感じなんだろうなと思います。お勧めします。